宇都宮線と東北線の呼称

211系LED表示(2006年6月)。高崎線との区別に用いられるほか、宇都宮-黒磯間の区間運転でも使用されることがある。経緯にもある通り、地元自治体が働きかけて「宇都宮線」の呼び名が決まったため、関東地方では「宇都宮線」の呼称が使用され、「東北線」(「東北本線」)の呼び名は黒磯以北に直通する列車に使用されることが多い。JR東日本の運行情報案内では、この区間については「宇都宮線」(路線愛称名)を用いており、黒磯以北区間については「東北本線」(正式路線名)または「東北線」の名を用いている。名称制定について住民感情に基づく紆余曲折を経ているため、一部の駅構内時刻表やのりば案内、列車内停車駅案内で「宇都宮線東北線)」と併記しているほか、長距離旅客主体の新幹線の車内放送等では「東北線」と案内することがある。また、市販されている雑誌型の時刻表では「東北本線宇都宮線)」などと表記されている。なお、宇都宮線の呼称制定前の国鉄時代に登場した211系電車の正面方向幕は通常は「普通」を使用するが、まれに「東北線」を表示させることがある(写真参照)。一方、JR化後に登場したE231系電車の行先表示器は「宇都宮線」・「湘南新宿ライン宇都宮線直通」である(211系の場合でも湘南新宿ライン運用時の表示には「宇都宮線直通」で設定されていた)。日常的なJR東日本(関東)利用者の間では、各鉄道事業者などが車内放送や駅構内案内等で「宇都宮線(あるいはJR宇都宮線)」を日常的、恒常的に用いるため、「宇都宮線」の呼称が定着している。

上野-大宮
上野駅はかつて東北・信越・北関東方面のターミナル駅としてにぎわったが、近年では東北新幹線が東京駅発着となり、また宇都宮線高崎線上野駅始終着列車や快速列車の3分の1が湘南新宿ラインに振り分けられるなど、利用客数が減少傾向にあるが、駅周辺には上野動物園国立科学博物館国立西洋美術館東京文化会館などの大規模文化施設が集まり、休日になると相変わらずのにぎわいを見せている。宇都宮線列車は上野駅を出てしばらくの間、ポイント上を通過するなど徐行運転を続ける。低いホーム(上野駅13-15番線)と高いホーム(上野駅5-9番線)からの線路が同じ高さに集まり、鶯谷駅から日暮里駅付近からスピードを上げて常磐線(複線)を東に分けた後、西日暮里駅を通過する付近で並走していた山手線・京浜東北線複々線)および東北新幹線(複線)と分かれて高架を走り、田端貨物線をまたいで新幹線操車場の東側を進み尾久駅に停まる。この上野-尾久間は回送線の意味合いから複々線区間となっており、高いホームを発着する列車は複々線の外側の線路を、また低いホームを発着する列車は複々線の内側の線路を通り、田端-尾久間でポイント分合し、2線は尾久駅方面、2線は操車場方面に繋がる。この区間では、上野駅発着の寝台特急(などの客車列車)の推進回送が行われている。尾久駅は1面2線の東京都区内にあっては小さな駅であるが、構内に客車操車場があり、留置線、洗浄線、尾久車両センター(旧尾久客車区)の検修庫、田端運転所があり、日中は寝台特急北斗星」、「あけぼの」などに使用される機関車(EF81形=田端運転所、EF64形1000番台=長岡車両センターなど)や客車編成(24系・14系)のほか、宇都宮・高崎・常磐各線の回送電車などが留置されている。同構内は電化部分と非電化部分が混在することもあって、客車の入れ換え用機関車としてDE10形やDE11形(宇都宮運転所)が常駐する。

尾久駅を出ると駅西側の構内留置線をまとめるように西に向けてカーブを切り、すぐに進路を北西に向けて尾久駅の西側を走っていた東北新幹線高架および京浜東北線東北貨物線の各線路と合流する。東北新幹線京浜東北線は当線路をまたいで東側に出るが、東北貨物線はそのまま当線の西側を併走する。間もなく都内有数の桜や紫陽花の名所で知られる飛鳥山公園の丘陵地の東裾を経て王子駅を通過する。平坦な直線区間を通って東十条駅を通過すると高架に上がり、西から来る埼京線赤羽線)と合流すると赤羽駅に着く。赤羽駅宇都宮線としては東京最北端の駅であり、埼京線湘南新宿ラインなど都区内から埼玉県に伸びるJR在来線の結集地点になっている。駅の東側には繁華街が形成され、地下鉄南北線埼玉高速鉄道線赤羽岩淵駅も徒歩圏にある。

赤羽駅を出ると東北新幹線埼京線の高架を西に分け、間もなく新河岸川、荒川の橋梁を渡って埼玉県に入る。新河岸川はこの下流の岩淵水門付近で荒川下流隅田川となる。赤羽駅から大宮駅にかけては、東側から電車線(京浜東北線)、列車線(上野発着の宇都宮線高崎線)、貨物線(湘南新宿ライン)の3複線が走り、走行速度も110-120km/hとなる。沿線には広い緑地帯を持つ高層マンション群(川口、蕨、浦和、さいたま新都心等)や駅前の複合ビルが林立する。埼玉県に入るとまず京浜東北線の駅である川口駅を通過する。川口は江戸期に隆盛した舟運によって特産品の鋳物を江戸に供給し発展を遂げた。沿線は鋳物工場の集積地あったが、近年はベッドタウンとして高層マンションに建て替えられ、近代的な街並みとなっている。西川口駅蕨駅と通過し、東京外環自動車道をアンダークロスして線路東側に浦和電車区を眺めると武蔵野線との乗換駅である南浦和駅を通過する。西に狛犬ならぬ狛ウサギが特徴の調神社の森や遠く武蔵浦和駅周辺の高層マンションを見ながら3複線の両側の京浜東北線宇都宮線東北線)上り線、東北貨物線が高架に上ると県庁所在地駅の浦和駅に着く。東北貨物線にはホームがないため湘南新宿ラインなどは通過する。浦和駅は埼玉県庁の最寄り駅で、駅西口は旧浦和市中心繁華街となっており、駅前から西に向けて伊勢丹浦和店・コルソ、ユザワヤ浦和店と商業施設が並び、その西側に埼玉会館、市立浦和中央保健所、県立浦和図書館、県庁、埼玉県警、裁判所、県立文書館といった主に国県関係の官庁街が広がる。また、当駅はさいたま市役所の最寄駅でもあり、当駅の北西約500m先にある浦和センチュリーシティ(旧浦和市役所庁舎跡地)のさらに先、西口から約1kmの場所に立地する。東口は近年の再開発によってできたパルコを中核店舗とする新しい商業地区となっている。

浦和駅を出ると東北貨物線京浜東北線とともに高架を下り、旧中山道をくぐって京浜東北線北浦和駅を通過する。北浦和駅を過ぎ北に向けてカーブした付近で東北貨物線線路の上下線の間に武蔵野線大宮支線が地下から合流して来る。この線路の与野駅-大宮駅間は東北貨物線複々線部となっており、大宮駅を発着して武蔵野線京葉線中央本線方面を結ぶ「むさしの」や「しもうさ」、臨時快速「ホリデー快速河口湖」などの快速列車が同線経由で運行されている。与野駅を通過するとさいたま新都心の高層ビル群が左手に見えてくる。そして東北貨物線が大宮操車場に入るとまもなくさいたま新都心駅に停車する。当駅は大宮操車場(大宮操駅)を再開発したさいたま新都心にあり、さいたまスーパーアリーナやさいたま合同庁舎の最寄り駅となっているが、大宮操車場には旅客駅設備が無いため、貨物線を走る湘南新宿ライン武蔵野線直通列車は通過となる。さいたま新都心駅・大宮操車場を出ると、東北貨物線は操車場の留置線群をまとめ下り複線・上り単線となる。そして下り線が広い大宮駅構内の西側辺縁に沿って大きく反れ、下り貨物線が下り列車線をくぐって上下列車線の間に入ると、西から東北新幹線埼京線が接近して大宮駅に着く。大宮は式内社名神大社に列せられた氷川神社門前町であり、江戸時代には中山道の宿場町大宮宿となった。近代以降は東京と東北・信越・関東北部方面を結ぶ列車の結集点として国鉄大宮工場や大宮操車場(その後貨物駅)が立地する「鉄道のまち」として発展し、京浜東北線川越線東武野田線といった短距離通勤電車が結節する東京の北側にあって随一のターミナル駅となった。駅付近は東口・西口ともに繁華街が形成されているが、駅東側は氷川神社参道また旧中山道大宮宿を彷彿とさせる落ち着いた街並みの繁華街で大規模店舗も高島屋一軒である一方、駅西側は新幹線開業時の再開発により誕生した大宮ソニックシティを中核とした新興地区であり、駅前にはバスターミナルが設置されこれを囲むように丸井、ダイエー、そごうが出店しており、東口と西口は対称的な色合いを醸している。